ラピスラズリ 山尾悠子
冬のあいだ眠り続ける宿命を持つ“冬眠者”たち。ある冬の日、一人眠りから覚めてしまった少女が出会ったのは、「定め」を忘れたゴーストで──『閑日』/秋、冬眠者の冬の館の棟開きの日。人形を届けにきた荷運びと使用人、冬眠者、ゴーストが絡み合い、引き起こされた騒動の顛末──『竃の秋』/イメージが紡ぐ、冬眠者と人形と、春の目覚めの物語。不世出の幻想小説家が、20年の沈黙を破り発表した連作長篇小説。
登場人物が次々に変わるので、読んでいるうちに「今誰の話をやってるの?」混乱しますが、それすらも夢のようで美しい。
冬眠者、使用人、人形、ゴースト、春の目覚め。 寒々しいイメージが重なりあい、絡み合い、幻想的な美しさを醸し出しています。
決壊石奇譚 百年の記憶 三木笙子
同級生の大地に誘われて地学部に入部した、高校一年生の徹。鉱石の話になると途端に饒舌になる彼と過ごすうちに、徹は大地が持つ不思議な「力」を知ることに。特定の石に触れると、前の所有者の記憶を読むことができるのだ。大地は、同じ力の持ち主である祖父・伝から記憶を受け継ぎ、昔、祖父が親友と交わした、当てのない約束を守り続けていた。話を聞いた徹は、大地を約束から解放したいと願い、ある決意をする――。
文庫版では『百年の記憶 哀しみを刻む石 』と改題されています。
鉱石に触れることで、記憶を読み取る能力を持つ人々の話。紫水晶や琥珀、翡翠とともに語られる幻想的な作品でした。伝と良治の江戸時代に交わされた約束が、違う意味になって航と徹に伝わってしまっていたのが切ないけれど、ハッピーエンドを匂わす終わりだったのが救いでした。
![]() | 価格:759円 |

銀の犬 光原百合
人々に降りかかる災厄を打ち払う「祓いの楽人」オシアン。その名は伝説の祓いの楽人と同じであり、その人間離れした音楽の才を妖精の女王ニアヴに愛され、妖精のあいだにしか伝わらないはずの数々の歌を全て口伝えに授けられたとされる人物だった。オシアンは、相棒のブランとともに世界中を旅し、この世に未練を残した魂や悪鬼、「愛を歌うもの(ガンコナー)」たちを、彼の竪琴が奏でる調べで救っていく…。ケルト民話と著者の独特の世界観が作り上げる、切なく、悲しいファンタジーミステリー。
ケルト神話をモチーフに、幻想的で美しい文章で紡がれる、切なく哀しい五つの恋。 声を失った美貌の「祓いの楽人」の青年オシアンと、相棒の少年ブラン。 終わってしまった哀しい恋に、行き場を失いさ迷う魂に、二人が竪琴と言葉で救っていきます。 水底に差す一筋の光のような、優しくて澄んでいて、そして温かい物語でした。
ポポイ 倉橋由美子
時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。
幻想的な夢の中のような雰囲気漂う作品。
実は桂子さんシリーズの作品だということで話が分からない部分もありましたが、それも含めて謎めいたこの作品とマッチしていました。
![]() | 価格:330円 |

夜行 森見登美彦
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語。
幻想と現の狭間の不思議な作品だった。 夜の不気味さ、登場人物たちに起きる不思議な現象。変わった京都を楽しむことができました。
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