個人的に春になると読み返したくなる小説を5冊挙げてみました。
1冊目 『はるがいったら』飛鳥井千砂(集英社文庫)
両親が離婚し、離れて暮らす姉弟。完璧主義の姉・園は、仕事もプライベートも自己管理を徹底しているが、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛を続けている。体が弱く冷めた性格の弟・行は、寝たきりの愛犬・ハルの介護をしながら高校に通い、進路に悩む。行が入院し、ハルの介護を交代した園。そんな二人に転機が訪れ―。
園と行の視点を交互にして、物語は進んでいきます。
着楽道で着物を着こなし、完璧主義で努力を怠らない園の姿勢には感服。私も頑張らなくちゃ!と背筋が伸びるので、だらけてしまうときに読み返しています。
2冊目 『マジョモリ』梨木香歩
春のマジョモリは花が満開。ある朝つばきは、森から届いた招待状を手に初めて森の奥へ。そこで出会ったハナさんとノギクやサクラのお茶でティーパーティー。後からもう一人来た女の子は誰? 「小さな女の子の時間」を描く。
神様の世界、花が咲く森でのパーティー。おいしいお菓子と飲み物。読んでいると楽しい気持ちになれます。
3冊目 『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午(文春文庫)
素人探偵のもとに持ち込まれた霊感商法事件の意外な顛末、そして…。あなたは最後の一文まで、ただひたすら驚き続けることになる。
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして——。
感想を言うとネタバレになってしまうので、言えないジレンマ。
ハラハラドキドキの読書体験が楽しめました。
4冊目『桜の下の人魚姫』沖原朋美(コバルト文庫)
早春。女子高生の沙耶は、姉の伽耶の勤める病院でひとりの少年に出会う。裏庭の桜の木の下、まるで春霞のようにはかなげな姿―天才ピアニストだった彗。次第に彼に惹かれていく沙耶だが、ある日、彼の本当の病名を知る。ふわふわ舞い散る花びらみたいな淡い恋のゆくえは…?
こちらには『桜の下の人魚姫』と『月のしらべ、銀のみち』の二編で構成されています。
上品で繊細な描写、透明感のある文章で、一つ一つのエピソードが丁寧に紡がれています。
この作品に出てくるクラシック曲も、有名な作品を使っているので、あまりクラシックを聞かない方でもイメージしやすいと思います。
好きなエピソードは「桜の下の人魚姫」で沙耶が姉の伽耶に憧れて塗ったマニキュアのシーン。
このマニキュアと同じ色を、彼女も高校生の頃にしていたということを、伽耶は忘れているのだろうか。小学生だった沙耶は、姉の爪は桜の花びらのようだと憧れたものだった。そして自分もいつかあんなふうに爪を染めたいと思いつづけ、ようやっとそれが許される年頃になったのだ。
(略)
「あなたは爪が小さいから、そんなふうにすると桜の花びらみたいね」
「桜の下の人魚姫」の曲
『トロイメライ』シューマン
「月のしらべ、銀のみち」の曲
『月光』ベートーヴェン
5冊目『勿忘草の咲く頃に』沖原朋美(コバルト文庫)
“クレマチスやカンパニュラこぼれる花壇のすみで、一本だけ、本当に一本だけ、ひっそりと咲く勿忘草のように。あなたを、君を、忘れない―”。両親の離婚により、母の生まれ故郷にほど近い町に転校してきた七瀬。一枚の絵の前で出会った少年は、どこか影のある同級生、育世だった。病弱で学校を休みがちな彼と七瀬の心は、いつしか微妙に寄り添っていくが…。せつなくにじむ純愛物語。
沖原朋美さんを知ったのがこの作品でした。
友人ができても孤独感が拭えない七瀬と、少し周囲と違う雰囲気を纏った育世。
美しい自然描写と共にゆっくりと進んでいく二人の交流。
切なくて淡くて優しく、何度も読み返す一冊です。
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