あらすじ
遠子の受験・卒業を目前にし、寂しい思いにとらわれながらも、ななせと初詣に行ったりして、和やかなお正月を迎える心葉。だが、ななせがケガをし、入院先に見舞いに行った彼は、その心を今も縛り付ける、ひとりの少女と再会する―! 過去に何があったのか。そして今、彼女は何を望んでいるのか…。心葉は、そしてすべての物語を読み解く”文学少女”は、その慟哭の中から「真実の物語」を見つけ出すことができるのか!?
本
『インスマウスの影』ラヴクラフト
「ああ、なんて美味しいの。この、鼻を突き刺す生臭さ。冷たくて、ぐにゃぐにゃした食感。さすがは怪奇幻想文学の巨匠にして、クトゥルフ神話の生みの親、ラヴクラフトの代表作ねっ! 舌にまとわりつく、どろりとした血の酸味がたまらないわ」
『クトゥルフの呼び声』ラヴクラフト
シュールストレミングみたいで、最高に美味しいからっ!
『枕草子』清少納言
『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『風の又三郎』『セロ弾きのゴーシュ』『グスコーブドリの伝記』『春と修羅』『ツェねずみ』『双子の星』『黄色のトマト』
「賢治の作品はとても素朴で、土や風や光の香りがして、透明で切なくて、懐かしい感じがするの。たとえば、風が爽やかに吹く畑で、土のついたトマトを服の裾でごしごしこすってかぶりつくような――。まだまだ青臭い、酸っぱいような苦いような、甘いような味が、口一杯に広がって、喉を潤してゆくような感じなのっ。
それから、川で冷やしたキュウリとか、生のまま齧る色鮮やかな甘いナスとか、お祭りの夜に飲む透きとおったラムネとか――ストーリーだけじゃなく、文章の言い回しや、リズムや、言葉そのものが、独特で美味しいの!」
「のどかで美しい風景の中で、女性歌手と彼女に憧れる女の子の短い交流を描いた『マリヴロンと少女』は、野生の葡萄のように甘酸っぱい味がして、大好きなお話なの。子兎のホモイが、ひばりを助けて宝物をもらうけれど、だんだん自分は偉いんだって思い込んで失敗してしまう『貝の火』も、赤くて白いラディッシュをこりこりと齧るようで、苦みが効いていて美味しいの。
『春琴抄』谷崎潤一郎
ふぐのお刺身のように白く艶やかで、官能的で、舌にまとわりついてくるの。
喉を滑り落ちてゆくふぐのなめらかさと、ふいに襲ってくる生々しさに、胸がびくっと震えて、その禁断の深い味わいに、頭の芯が痺れて、なにも考えられなくなってゆき、ただただ至高の味に酔いしれてゆく感じなのっ。
『ピーターラビット』
『敗れし少年の歌へる』『暁空への嫉妬』
『伊勢物語』
『永訣の朝』『松の針』『無声慟哭』『雨ニモマケズ』
『青春は美わし』ヘルマン・ヘッセ
感想
魂の慟哭が、胸に突き刺さるような作品でした。 汚くて、醜くて、非常で、憎しみを杖に生きている少女にも、優しくて神聖で愛のある部分がありました。 心葉もヘタレから強くなっていきました。 ラストは本当に、なにもかもが透明で美しかったです。
コメント