”文学少女”と月花を孕く水妖 野村美月

小説

あらすじ

『悪い人にさらわれました。着替えと宿題を持って、今すぐ助けに来てください』―そんな文面で呼び出され、貴重な夏休みを姫倉の別荘で過ごす羽目になった心葉。“おやつ係”として呼ばれたはずが、麻貴の挑発に乗せられた遠子に引きずられ、昔屋敷で起こったという惨劇の謎解きをする羽目になり―!? 不敵に微笑む麻貴の望みとは? 自らの“想像”に心を揺らす“文学少女”の“秘密”とは―?

『アッシャー家の崩壊』ポー

『マノン=レスコー』アベ=プレヴォ―

甘く熟れたイチジクに、舌がカアッと燃え上がるほど洋酒を振りかけて煮て、ビターなチョコレートアイスを添えていただく感じなのっ。イチジクのぐじゅぐじゅした果肉が舌にからみついて、目眩がするほど美味しいのよぉっ。

『高瀬舟』森鴎外

『トニオ=クレーゲル』トーマス=マン

ずっしりと重いベイクドタイプのチーズケーキのように、酸味のきいた濃厚の味が、舌の上にざらりと広がり、ゆっくりとろけるの。レモンと洋酒の香りがほのかに漂って、哲学的だけど爽やかで、少しだけ飲み込むのが苦しくもあるのよ」

『ヴェニスに死す』『魔の山』

『ヘルマンとドロテーア』ゲーテ

『青い花』ノヴァリース

『黄金の壷』ホフマン

『アルト=ハイデルベルク』マイヤー=フェルスター

『金色夜叉』尾崎紅葉

『たけくらべ』樋口一葉

『歌行燈』『夜叉ヶ池』『草迷宮』『照葉狂言』『高野聖』『天守物語』泉鏡花

鏡花の描く物語は、まるで花で作ったお酒のようよ! 可憐な野菊、神秘の月見草、あでやかな山梔子、凛然たる忍冬、咲き誇る金木犀。

花々の香りに陶酔しながら、きらきら光る透明な液体を少しずつ味わううちに、足元がおぼつかなくなり、目眩がし、自分がどこに立っているのかすらわからなくなってしまう。舌に広がる、めくるめく百花繚乱に飲み込まれてゆくのよ」

『外科室』泉鏡花

まるで、よく冷えた山梔子のお酒のように……言葉も物語も、透明で儚くて……。

ほのかな花の香りがいつまでも口の中に残って、それがとても切なくて、同じ場面を何度も読み返してしまうのよ……

小林一茶

『ウンディーネ』フリードリヒ=フーケ―

まるで、干しぶどうがいっぱい入った、硬いライ麦パンを齧るように、素朴で、懐かしくて、少し苦くて……愛おしくて……噛むほどにライ麦の酸味が増して、干しぶどうの自然な甘さと溶け合って。舌に切ない余韻を残すの……」

『ヴィルヘルム=マイスターの修業時代』ゲーテ

『枯葉の寝床』森茉莉

感想

泉鏡花をモチーフにしているだけあり「鏡花水月」という言葉がぴったりな作品でした。

個人的に、この作品のイメージソングはRIKKIの『素敵だね』です。

コメント

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